「暇だったから」

かたつむり主演と聞き、私が見に行かずして!と、どうでもいい義務感の中行ってきました。
かたつむりはすごい。

脚本:樅野太紀
演出:毛利亘宏(少年社中)

かたつむり
Bコース
メルヘン倶楽部
浜口順子(ホリプロ)


まず、舞台が密室。そして密室の端にぽつんと置いてあるビデオカメラ。左右には、五台のモニター。客入れなしで無音。この状況だけで何が起こるんだろう!というわくわくが止まりませんでした。

話としては、話が進むにつれて各個人の秘密が明らかになっていって、最後の人物の秘密にたどり着く感じ。最後の展開が読めなかったというような斬新な展開だったわけではないんですけど、そこに行きつくまでに二転も三転もするもんだから、え?違うの?本当はそっちなの?と揺さぶられまくり。ばらばらのように感じる各個人の秘密が、後半でつながっていく様は爽快でした。

秘密、というか、それぞれが犯した犯罪を自白していくわけですが、一人、また一人と自白することで、他の人の犯罪が明らかになったり、つながりが判明したりするのが。どんどん関係が更新されていくんですよね。気づいたら、一個の犯罪の真相への道が出来上がっている、その道が見えた瞬間のうわーって感じがたまんなかったです。


タケトさんはつっこみ役。みんなタケトさん頼みでボケてるのもあって、拾う拾う。議員殺害のとこでは一瞬だまされました。えっそうなの?ってなっちゃいましたよね。林さんとのコンビネーションが素敵でした。
ナベさんはナベさんでした(笑)。あのうすっぺらい感じが役柄にあってて、よかったです。ニートの歌が好きです。
ハブさんは後半で出てくるキーポイント役で。まぁふざけていいところはふざけまくってましたけど、声を落として淡々と台詞言われたら、ふわってなるくらいにはかっこよかったんで、ずるいなー!と思いました。ギャップ!

クニちゃんは嫌味なインテリメガネ大学生。 イラッとさせる雰囲気がとてもあってました。あとやっぱり男前だなって実感しました。
たくちゃんはキャラ通りっちゃキャラ通りな(笑)。彼女に養ってもらってるのに浮気もちゃっかりしてて、典型的なだめんずでした。
よかったです二人とも。最初笑っちゃうかなー地獄かなーとか思ってたけど全然。あと二人とも、声いいなーと思いました。カーテンコールはいつものたくちゃんだったので、すぐ魔法が解けました(笑)。

浜口順子さんを初めて見たんですけど、かわいらしい!きれい!さすがホリプロさん!関西の方なだけあって、芸人にも物怖じせずにガンガン行ってて、見てて気持ちよかったです。ハブさんにぶっこんだりすんだもんなーかっこいい!嫌な女の役なのに、好感度をさげないあの感じ。表情がすごいくっきりはっきりしてて、しかもそれが細かくて見応えありました。ほんとーに嫌そうな表情をなさるんですよね。素敵な女優さんですね。

章吾さんは、見たことない役柄で新鮮でした。ずっと端で全体をじーっと見て、何を考えてるのかさっぱりわからない怪しさ。口を開いても核心には一切触れず、ずっと他人事のような顔をしてるのに、絶対こいつがキーだ!と確信してしまう怪しさ。なんなんだろう、このひとの存在感。ずーっとオドオドしてたのに、自分が犯人だと告白しだした瞬間のスイッチの入り方に、背筋がぞくぞくしました。たまらん。いやー怖かった。ずっと章吾さんは怖かったです。なにか持ってるのに、それがなんなのかずっとわからないし、一回スカされるし。おふざけがすぎたかおるさんだったこともないですけど、あの存在感と怪しさで全て帳消しです。
林さんは、話の全体的なまわしの上、最後に全部持ってっちゃう、もう主演ありがとう!な美味しすぎる役でした。高瀬の得体が知れない感じが、うさんくさくてチャラチャラしてる林さんの演技が見事にマッチしてて、よかったなぁー!あの笑顔がもう絶好調にうさんくさい。その笑顔が三段階くらいあるもんだから、だまされるだまされる。基本的にニコニコしてる(でも感情はない)のに、ふと無表情になったり、冷たい眼になったり、謎めいた笑みになったりするんですもん、目が離せるわけないじゃないか!結構ゴチャゴチャしてる話を進めるのも整理するのも問いかけるのも林さんで、語り口が軽いのであまり難しくは感じないんですけど、それが流れることもないという絶妙な語り部で、すばらしかったです。台詞量もポジションも、ものすごい比重がかかってるのにひょいひょいこなしてるような。本人曰くテンパってたらしいですけど。「犯罪者だろうが」と「きれいすぎる人です」にはもれなくふわっとなりましたよええならないわけがない!


諸々。
自白ショー自体は、大林(章吾)を自白させるための嘘で皆グルの中、もう一個そこに嘘があって、高瀬(林)と井沢(タケト)がグル。この二人がいーいところでアイコンタクト取ってるんですよね!うかくの名前を高瀬が出したところで、みんながうかく?となったところで間髪いれずに井沢のうかくの説明が入るわけです。その瞬間、高瀬が井沢へ視線を送っていたり。とにかく、高瀬の虚言を真実味を持たせるために井沢がいて、そこのコンビネーション!脚本のつくりにも、二人の演技にもぎゅんぎゅん圧倒されました。林さんの視線の持ってき方が、さりげなくてでも意味があって、たまりません。あと、うかくの説明を聞いて、みんながへぇーってなったら、林さんが見えないところでにやっとしてたり。
あ、三時間前の一番最初に部屋に入ってきたところのシーンで、七条(浜口)が、大枝(くに)と高瀬(林)を見たとき、あっ!って反応してたのが印象的でした。あと、高瀬が口上を述べてるときに、七条はずーっと嫌そうな顔して見てるんですよね。これが最後の「あーいうところも、だいっきらい」につながるんだなーと思って。浜口さんはいいなー。

演出も好きでした。モニターに囲まれてる舞台もいいし、ビデオカメラを使った演出も素敵。OPVがリアルで撮ってるVになってたりとか。モニターってうかくの視点なわけで、リアルに二つの視点を見てるような感覚。見る場所変えたら、何回でも見れちゃう見応えある舞台でした。


林さんの話が多くなってしまいましたが、本当演者・脚本・演出全部よかったです。いいバランスでした。かたつむりが好きでよかったと胸を張れる舞台でした。