kisskisskiss2010

脚本・演出:カリカやしろ

平田敦子


安達健太郎(カナリア)
チーモンチョーチュウ
ブレーメン
ジャングルポケット

長い長い感想です。ガンガンネタばれもしてますのでご注意を。
家城さんにしてはポップでわかりやすいけど、相変わらずザクザクと刺さる台詞ばかりで一言も逃したくないなぁと思いながら見ました。キスは一回目こそ「うわー」と思いましたけど、5分くらいで慣れました。たくさん見るとどんな状況でも麻痺してしまうもんなんだなと思ったり。


これは本当に平田さんありきだなと思いました。太子が平田さんだからこそリアルだし、進んでいくにつれどんどん可愛くなっていく太子や、恋に対して次こそはと意気込む反面怖くなっていく描写を見事に表現なさってて、平田さんの上手さを堪能しました。平田さんであることで太子への中傷が可哀想…とならないというかなり過ぎないというか。なんていうか見てられなくなるということがなくて。家城さんは人間の汚い部分を目をそらさずに書かれるので、OL三人の太子への対応ってすごくリアルで「うーわ…」と思う部分もあったんですけど、平田さんであることで中和されているように思いました。それは平田さんがそこを武器にしているといいますか、そもそもコンプレックスにされてませんし、吹き飛ばすパワーのある演技をされるということを知っているからかもしれませんが。とにかく素晴らしかったです。もーとにかく恋する太子が可愛いんですよね。相手が変わっていくのと同様に、恋が楽しいだけじゃなくて苦しいものだとわかっていくことで太子の考えも変わっていって。ガモウの恋が終わる瞬間(相手に冷める瞬間)の「やめてー!!!」という悲痛な叫びが切なくて切なくて。


菊地さんはいやーな男の役ですけど、なんだか嫌いになれないのは菊地さんのキャラなんでしょうか。福田みたいな男の人が一人目ってすごいリアルだと思いました(笑)なんていうか、変化球のないチャラ男で(笑)。穏やかな喋り口だったところから「じゃあどうすればいいんだよ!」と怒りをあらわにするところの怖さは菊地さんの上手さですね。OPのダンスは普通にかっこいいなーって思いました。見応えあるし、動くし、飛ぶし。生で見るとやっぱ迫力がありますね。
白井さんは一途に福田を思い続ける女の人の役で。裏切られても裏切られても好きで、そんなしらこが切なくて可愛くてたまりませんでした。「ごめんよりありがとうが嬉しかった」という台詞の切ないこと。OL三人のシーンではたけみがぶっ飛びすぎてて、しらこが引いてたのが新鮮でした(笑)。
最後のダンスでのチーモンのキスがふりなのは、逆にほっこりしました。チーモンシチサンで話しててそうなんだ!って思ったんですけど、ここって福田が出所したのをしらこが迎えにいったっていうシーンなんですね!それを聞いて、改めてしらこよかったなぁって思えました。素敵。


関根さんはスターでしたね(笑)。ロックでぶっとんでるアキラの台詞が嘘くさく聞こえないのは、関根さんの器だなと思いました。スターキャラの器。「嫌われたくないじゃなくて好かれたい、失いたくないじゃなくて掴み続けたい」という台詞は、座右の銘にしたいくらい染みました。キスのバリエーションも様々で見てて楽しかったです。ジャックナイフが好き(笑)。
岡部さんは!もう!ずるい!ときめかないわけがない!地味でさえなくて、うだつがあがらなくて、女子社員にはきもいって嫌われてて、でも太子を堂々とかばってあげたり、注意したり。随所できゅんきゅんさせられて、しかもそれが岡部さんだから自然で。最後の太子のシーンなんて「太子は僕が幸せにしちゃうから、安心しちゃっていーよー」「気付かなかったでしょ?俺隠すのうまいから」「好きに『なった』じゃなくて、好き『だった』のー!!」「あれ?これ付き合う流れなんじゃないのー」諸々もれなくときめきました。小林が岡部さんなのって本当にずるい(笑)。きゅんきゅんさせていただきました。


斉藤さんってなんであんなに面白いんでしょうか。OPのダンスなんて斉藤さんから目が離せないし、笑い止まらないし。ガモンは「ぼくはみんなのものだよ!」とはっきり愛する彼女の前で言い切れちゃうのがすごい。それを「独り占めしようってのかい?」と言っちゃうのがすごい。それを言わせる家城さんがすごい。斉藤さんのターンでは、平田さんが結構折れちゃってるのが新鮮でした。なかなかないですよ平田さんが折れるの!すごいなさすが斉藤さんだな(笑)。
太田さんと武山さんはOL二人。二人ともかわいかったー!武山さんなんて最初出てきたとき一瞬わかんなかったです。自由にやってらして、見てて楽しかったです。このOL三人が男なのって家城さんだなぁと思いました。そんなに家城作品を見たことはないですけど、なんとなく。千秋楽では太田さんが声がらがらで、ますますおたえさんが男でした(笑)*1OL三人の自由な時間では、武山さんがどんどん遠いところへ行ってしまうのを的確につっこんでる太田さんが面白かったです。ここって普段役割逆ですよね?(笑)白井さんすらも引かせてしまう武山さんのぶっとび方。化け物だな。


安達さんはエロかったです。安達さんの頃くらいになると、こちらもキスに対して耐性が出来ているわけですが、その耐性をぶっ壊してくる安達さんのエロさ。そりゃ客席も静まり返ります。太子を「?」とさせる流れるような台詞まわしはさすがだなと思いました。小難しいことを言ってるので、ゆっくり聞いてても理解しづらいんですけど、本当それをさらさらっと言っちゃうんですよね。それがすごくコウという人を表してて、意味がわかっててさらっと言ってるっていうのが。コウが話してた新しい小説は、それだけで一本できちゃうような興味深い話でした。家城さん是非。ちなみにここの別れ方が一番怖っ!と思いました。ずっと好きを持続させるって恐ろしく大変ですよね。
太子へ力を与える神様の声がボンさんでした。この神様がいい塩梅に俗物で(笑)。よかったなぁ。それがボンさんの声なことで人間くさいっていうか身近な感じがして。太子が「(男の人は)ずっと好きのままでいたらいいのに!」って言ったときに間発入れずに「死んでまえ」と言えるのってすごくかっこいい。


家城さんの演出で何が好きって音楽の入れ方なんですけど、今回もRADWIMPSの曲の入れ方が絶妙で。RADの歌詞が家城さんの書いた台詞のように聞こえてくるんですよね。あれはたまらなかったなぁ。電気グルーヴのシャングリラもそのまんまですけど、すごくいいスパイスでした。携帯でモラル太子が崩壊するところに悪女がかかったりとか(笑)、ツボをおさえられるといいますか。ああ、好きです。
家城さんの作品を見ると、なんかもうとにかく家城さんの世界に埋もれてたいという気分になります。それがこの上なく幸せです。素敵な作品でした!

*1:家城さんいわく、太田は女の心を持てなかったからただの化け物